連発・直下型クライストチャーチ地震とCTVビル崩壊が示した課題
「次の地震」に対して安全な構造物を確保する
建物のシートベルトの必要性

構造品質保証研究所株式会社
代表取締役 五十嵐 俊一

本年2月22日のクライストチャーチ地震で崩壊し、多くの犠牲者を出したCTVビルは、昨年9月の地震直後の応急被災度判定で安全であるとされていた。同じ惨事は、1999年8月と11月に相次いで発生した2つの地震に際して、トルコ国イスタンブール近郊でも生じた。阪神淡路大震災は、たまたま、コンクリートの建物の中に人が殆ど居ない時間帯に発生し、大きな余震も少なかった。崩壊したフロアは多数あり、クライストチャーチ地震と同じ時間帯であれば、合計数千人がCTVビルと同様に潰れたビルに閉じ込められた可能性が高い。

応急被災度判定では、外見上損傷の無い建物について、次の地震に対する安全性は評価できない。現行基準並みの強度があるかどうかを計算する現行の耐震診断でも費用と時間がかかる上に、今回の地震のように、「次の地震」が現行基準の想定を超える場合があるので難しい。さらに、現行基準並みにする補強には多額の費用と長期間の工事が必要になる。

現行の耐震基準と設計法では、免震、超高層なども含め、縦揺れ(上下動)は、水平の揺れに比べて大きさも影響も小さいとして、ほとんど考慮されていないが、クライストチャーチ周辺の地震記録は、上下動だけでも構造物を激しく破壊する強さとエネルギーを持つ。これは、地震記録から計算した応答スペクトル、テレビ、新聞で報じられた被災した方々の数々の証言、地震時の室内の様子が撮影されたビデオ、さらに、吹き飛んだような構造物の壊滅的な破壊状況、空前の規模の液状化に現れている。

連発地震、直下型の大地震に対する安全確保は、喫緊の課題でありながら、現行の応急被災度判定法、耐震診断法、及び耐震設計法では難しい。むしろ、自動車におけるシートベルトの着用と同様に、大地震で建物が損傷しても生存に必要な空間を確保する安価で信頼できる措置を講ずることを義務づけることが有力である。例えば、柱を高延性材で巻き立てる包帯補強(SRF工法)は、施工が簡単で安価な上、大きな上下動や水平変形を受けた場合においても柱が圧縮破壊することを防止し、エネルギーを吸収し大きな荷重を支持する効果がある。これを利用し、主要な柱を補強して倒壊しても壊滅せず生存空間を確保することができる。(以上 要旨)

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