第7回SRF賞公開シンポジウム開催のご報告 〜また来年も開催します〜

「収震、この2文字をみて、興味や関心を持ってくれる方が、たった1人でも来て下されば」
そんな思いで応募を開始した第7回SRF賞公開シンポジウム。


応募開始当初は、1週間に1名様のご応募があるかないかというペースでしたが、建築雑誌にチラシを折込んだこともあり、結果的には75名様と多数のご応募をいただきました。誠にありがとうございました。 今回は、シンポジウムへのお申込の際に、安全で快適な街づくりに関するご意見やご提案を募集させていただき、皆様から多数お寄せいただきましたので、SRF賞の選考結果と合わせて、本記事の最後にご紹介させていただきます。


 2月16日13時、第7回SRF賞公開シンポジウム〜みんなで考える安全で快適な街づくり〜と題した、SRF賞史上初の催し物が開演となりました。第一部はSRF賞の表彰、審査の講評、一般部門大賞受賞者様のご発表があり、 第二部前半は、東京大学地震研究所教授の壁谷澤寿海先生の記念講演「建築物の地震被害、構造実験とフェイルセーフ性能」、当社代表五十嵐の講演「収震―耐震、免震・制震に代わる新世代の方法―」と続きました。 (3月26日発売の日経アーキテクチャーに講演記事が掲載される予定です)


 そして、第二部後半にパネルディスカッションが行われ、その冒頭で辻先生、團先生から ご講話をいただきました。辻先生からは、一般の方と構造を専門とする方の認識誤差(パーセプションギャップ)の問題、現行法に適合している建物が地震の翌日から使えるという誤解があることや、 地震、津波、台風、竜巻、大雨、そして火災という多種多様な危険因子に対し、人命、生活、事業を保全することの難しさ、重要性についてご説明いただきました。 また、2018年8月に近畿地方を襲った台風21号の被害を受け、猛風対策の重要性などもご指摘いただきました。

 團先生からは、2014年に台湾建築奨首奨を受賞された台湾桃園国際空港第一ターミナル再生計画についてのご説明や、安全で快適な街づくりへの課題として、日本国内における土木と建築のつながりの薄さの問題や、 建築構造に従順になりすぎてデザインの創意工夫が失われていること、各々がビジョンをもち常に新しい視点から物事を捉え、ハイレベルなものを追い求める精神こそ重要であるとなどをお話しいただきました。 会場の皆様からは、伝統木構法とSRFの共通点のご説明や、SRFを新築に使用するための課題に関するご質問などをいただき、白熱した議論となりました。その中で、SRFを新築に使用するためには許容応力度を外す、 スリットに関しては系統的な実験研究により、その効果を検証すべき、SRFにより靭性型で新築を設計できるようにしてほしい、など専門的かつ具体的な対策や課題を挙げていただきました。 また、伝統木構法に関して、本来の石場建ては光付けして柱を石の上に置いている(人工的な平らな面の上ではなく)、伝統木構法をもっと知ってほしい、建築家たるもの実際に自分で木を削り、 木を組むということを一度は経験すべきである、という貴重なご意見もいただきました。


 気がつけば終了予定時刻を30分もオーバーしていたわけですが、「収震」のコンセプトや、「収震」による安全で快適な街づくりについて、ご専門の皆様に直接ご説明、ご提案できたこと、 そして数々の貴重なご指摘、ご意見等を賜りましたこと、大変ありがたく深く御礼申し上げます。今後は、机上の計算を無条件に全てに当てはめ、古きよき伝統を無視し、壊すのではなく、伝統を学び、 これを活かすということを意識していきたいと思います。また、現行の枠組みに囚われず、それぞれの大義名分や信念を貫ける環境に身を置く、あるいはそういった環境を自らつくる、 そして自らの環境に固執し他を抑えつけるのではなく、新しいものを取り入れて互いに高めあう意識をもつことができれば、「安全で快適な街づくり」の実現に一歩近づけるのではないでしょうか。

 来年もSRF賞・同賞公開シンポジウムを開催いたします。来年は、SRFに関する研究開発テーマを主に募集し、賞金だけでなく、その研究のための費用の一部を負担する、助成の要素も取り入れたいと考えております。 また、伝統木構法による木造建物や歴史的建造物等のSRF設計事例、施工事例なども募集、表彰することで、古きよき伝統の保護につなげていきたいです。

 第8回SRF賞・同賞公開シンポジウムが、既存の規制、枠組みでは実現が困難な新たなアイディアや可能性を生み、その実現に向けての方策を考える機会になることを願っております。皆様からのご応募を心よりお待ちしております。

SRF賞事務局長 五十嵐順平


■ 第7回SRF賞公開シンポジウムにお寄せいただいたご意見(抜粋)

  • 『首都圏に比べ、地方は建設業における新築・修繕・耐震改修等の環境整備に温度差を感じる。地震情報も地方の地震はNHK等でも全てを発表する事がないこともしばしばあり、孤立感をおぼえることがある。』
  • 『地震大国の日本に住む私たちが最も切実な課題として考えなければならない「命を守る地震対策」を地域経済の再生と地元建設業者の新たな売り上げの柱を構築することにつなげる。建物というインフラを安全に整備することが人の命を守り、かつ地域経済を活性化させる一石二鳥の対策と成り得ることを広く会社に浸透させたいと思っている。』
  • 『いくら防災上の整備をしても、人の意識を変える方の努力もしていかないと機能していかないと思う。』
  • 『東京等の大都市では災害時の十分な避難所やその後の仮設住宅確保は困難であろう。自宅が被災しても速やかに応急復旧等が出来る体制整備出来ることが課題と思われる。』
  • 『地震は(耐震性能は)起こってはじめてわかるもので断熱性能などと違い一般の人にはわかりにくいものだと思う。つまり自助努力による対策では社会的な解決が無理である。一方、助成金による誘導が望まれるが、公費で全てを賄うことも難しい。社会的な合意形成と法による義務化がなければならないと感じている。技術的な側面からは、設計、診断時の継続使用上の評価方法、安価な工法の開発が望まれる。』

このほかにも、たくさんの貴重なご意見等をいただきました。誠にありがとうございました。

■ 第7回SRF賞選考結果

【一般部門】
○大賞
○優秀賞 2作品
○佳作 3作品
【SRF部門】
○佳作 3作品