微動診断事例
新築マンションでの計測事例
■物件概要
- 用途:共同住宅
- 規模:地上6階
- 1階:駐車場・駐輪場
- 2階~6階:住戸
- 構造:鉄筋コンクリート造
- 竣工:2020年
- 1階独立柱8本をSRF補強
■計測概要
- 鉛直アレイ:6地点(🔵)
- 水平面:1階、3階、5階、R階(⭕)
- SRF補強前後で計測(微動計12台)

微動計設置写真例
補強前後での微動計の設置写真です。1回の計測当たり、約30分間データを取得しました。 計測は、鉛直方向(建物の高さ方向)で6地点(X1Y1、X3Y1、X5Y1、X6Y1、X8Y1、X10Y1)、水平面計測で1地点(1階、3階、5階、屋上階のX1Y1、X5Y2、X10Y1地点)で計測を行いました。 補強前の計測では、コンクリート打設後の躯体上に設置し、補強後の計測では、仕上げの上に設置しました。
補強前
1階X1Y1
5階X5Y2
屋上X10Y1
補強後
1階X1Y1
5階X5Y2
屋上X10Y1
軌跡と伝達率
補強後のX10Y1の1階と屋上階で計測された微動変位の2次元・3次元軌跡です。1階では、比較的球に近い形で小さく振動しているのに対し、屋上階では、Y方向に大きく揺れているのが分かります。 建物の形状は、Y方向の長さがX方向よりも10倍程度小さい為、Y方向により大きく揺れているという特徴が反映されていると考えることができます。
1階X10Y1
屋上階X10Y1
微動のアニメーション
屋上階における水平面計測における補強前後の振動計測結果(変位)をアニメーションで示したものです。補強前に比べて揺れが収まっており、かつXZ、YZ面上での回転が抑えられていることが分かります。 上側2つが-X方向から見たアニメーションで、下側2つが、+Y方向から見たアニメーションになります。
-
補強前
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補強後
補強前

補強後

※揺れを見やすくするため、変位は100万倍に拡大されています。
ベースシア係数
微動診断におけるベースシア係数とは、「その階の層間変位が降伏値に達するときの1階の応力を、支持部分の重量で除したもの」を表しています(各方向成分の降伏限界変形角を、\(R_{Yix} = R_{Yiy} = 1/150 \) 、\(R_{Yiz} = 1/500 \) として計算しています)。 SRFを用いた補強は1階ピロティ部分の独立柱のみでした。補強前後で、2階X成分、1階のZ成分では変化は見られないですが、その他の階と成分では、10%程度増加していることが分かります。 また、X成分の値はY成分の半分から6割程度であることが分かります。 計算値は、構造計算書に記載の必要保有水平耐力をもとにして計算したベースシア係数であり、X成分はY成分の54%と、微動解析結果の傾向と一致していることが分かります。 計算値と補強後の計測値の比は、約2倍程度になっていますが、これは、実際の層せん断力係数の高さ方向の分布と告示式の違いを反映していると考えられます。
ベースシア係数 | |||||||||||
階 | 計算値 | 補強前 | 補強後 | 補強後/補強前 | |||||||
X成分 | Y成分 | X成分 | Y成分 | Z成分 | X成分 | Y成分 | Z成分 | X成分 | Y成分 | Z成分 | |
6 | 0.30 | 0.55 | 0.43 | 0.88 | 0.12 | 0.50 | 0.90 | 0.13 | 1.16 | 1.03 | 1.08 |
5 | 0.30 | 0.55 | 0.50 | 0.89 | 0.10 | 0.55 | 0.98 | 0.11 | 1.10 | 1.10 | 1.08 |
4 | 0.30 | 0.55 | 0.60 | 0.99 | 0.13 | 0.68 | 1.08 | 0.14 | 1.14 | 1.09 | 1.10 |
3 | 0.30 | 0.55 | 0.63 | 1.02 | 0.13 | 0.69 | 1.15 | 0.15 | 1.09 | 1.12 | 1.11 |
2 | 0.30 | 0.55 | 0.64 | 1.10 | 0.15 | 0.63 | 1.23 | 0.16 | 0.99 | 1.11 | 1.07 |
1 | 0.30 | 0.55 | 0.77 | 1.25 | 0.19 | 0.84 | 1.45 | 0.20 | 1.10 | 1.16 | 1.02 |