微動診断事例
木造戸建ての計測事例
■物件概要
- 用途:専用住宅
- 規模:地上3階
- 構造:木造(枠組壁工法)
- 竣工:1998年
■計測概要
- 鉛直アレイ:5地点(🔴)
- 水平面:1階、2階、3階(三角形)

火災による被害と補強
該当建物は、過去に1階南側開口部付近に置いていた庭先のバイクからの出火により火災の被害を受けていました。 被害状況としては、1階(A-B通り、1-3通り)部分の仕上げ材が延焼していましたが、構造材への被害はほとんど見られませんでした。 耐震診断(一般診断法)を行い補強計画も立てていましたが、火災による影響も含めて、実際のところ耐震性能が不明であったことから、 建物の揺れを実測して耐震性能を推定する微動診断を、評価の1つとして採用しました。 補強は、火災の被害が大きく開口部が多い、建物南側の位置に重点的に耐力壁の増設(SRFで合板の際張り補強)を行いました。 微動による計測は補強前後で行い、建物の構造性能の変化を評価しました。
微動計設置写真例
補強前後での微動計の設置写真です。1回の計測当たり、約30分間データを取得しました。 計測は、鉛直方向(建物の高さ方向)で5地点(A2、B1、B2、B3、D2)、水平面計測(1階、2階、3階のA2-B1-B2、A2-B2-B3)で計測を行いました。 1階B2の写真から、火災によって仕上げ材が延焼している様子が分かります。下段の写真は補強後(改修後)の計測になるため、綺麗にリニューアルされた状態で計測できました。
補強前
1階B2
2階B3
3階B1
補強後
1階B2
5階B3
3階B1
ベースシア係数
微動診断におけるベースシア係数とは、「その階の層間変位が降伏値に達するときの1階の応力を、支持部分の重量で除したもの」を表しています(各方向成分の降伏限界変形角を、\(R_{Yix} = R_{Yiy} = 1/200 \) 、\(R_{Yiz} = 1/500 \) として計算しています)。 図では、各方向毎にベース応力係数を示していますが、ほとんどの地点で補強前(点線)よりも補強後(実線)の方が大きくなっていることが分かります。 表では、各地点の値の平均をとった建物全体としてのベース応力係数を示しています。補強前後でみると、X方向Y方向ともに値が増加しており、補強によって建物の剛性が高くなったと考えられます。
ベースシア係数 | |||||||||||
階 | 補強前 | 補強後 | 補強後/補強前 | ||||||||
X成分 | Y成分 | Z成分 | X成分 | Y成分 | Z成分 | X成分 | Y成分 | Z成分 | |||
2 | 0.86 | 0.91 | 0.27 | 1.20 | 1.38 | 0.32 | 1.39 | 1.52 | 1.18 | ||
1 | 0.68 | 0.96 | 0.28 | 1.21 | 1.62 | 0.33 | 1.78 | 1.69 | 1.15 |