耐震補強・改修の種類

芯棒になる柱を選定し、命の安全を優先する補強ー生存空間確保補強

生存空間確保とは建物が万が一倒壊しても、生存できる空間を確保しようとする改修方法です。一階部分など過去の震災事例で倒壊の危険性が高く、避難、救助の要になる部分について、芯棒になる柱を選定してSRF工法による柱補強を行い、柱の周りに生存できる空間を確保します。

既存の構造躯体を活用して部分補強を行います。また、耐震壁等と組み合わせて、生存空間を確保したい範囲を広げることも可能です。耐震基準をクリアする改修に比べ、設計・工事費とも大幅に抑えることが可能です。

築40年・50年の事務所ビルや、小学校などで取り入れられています。この図は、学校建物で生存空間確保を計画した例です。4階建の1階と2階部分の柱22本を被覆します。

大きな地震を受けても鉛直方向に潰れないようにして建物の倒壊を防ぐ「耐震補強」ー倒壊防止補強

倒壊防止補強とは、SRF工法による柱の「耐震補強」を行い、大きな地震が発生したときに柱に生じる上下方向の力(地震時軸力)に耐えられる能力(軸耐力) を向上させることにより、大きな地震力を受けても大事な柱が鉛直方向に潰れないようにして建物全体の倒壊を防ぐ補強方法です。

日本建築防災協会の構造耐震指標(Is値)をクリアしていなくても建物の倒壊防止目的に絞って、計画を行うことができます。この場合は、倒壊危険度(If値)を性能評価指標にします。

この場合も正規の診断費用に比べれば安価ですが、補強設計には調査と計算が必要となります。

ポリエステル繊維で「耐震補強」- 基準値クリア補強

SRF工法は、ポリエステル繊維によって「耐震補強」するものです。鉄板巻き・炭素繊維などと同等な耐震補強工法として建築防災協会の技術評価を取得しており、Is値※が基準値 をクリアする補強に用いることができます。 ※Is値:構造耐震指標

柱および耐震壁に対してSRF工法による補強を行うことにより、強度と変形性能を向上させることが可能です。

また、SRF工法は構造物の重量と剛性をほとんど変えないので、部分的に補強しても全体のバランスを変えることがありません。したがって、テナントの入れ替えや改装など施設の利用計画の時期に応じた柔軟な計画、段階的な補強工事が可能です。

コンクリートブロック壁、天井の「耐震補強」ー崩落防止補強

コンクリートブロック壁や天井等の対象物の一部あるいは全部が崩落することを防止することを目的として、SRF工法により補強材を対象物およびその周囲に設置する補強方法です。

災害時の拠点となる施設や精密機器を扱う工場等では、天井や壁の崩落によって機能が停止してしまうことが考えられます。災害対策として柱・梁・壁・天井の崩落防止補強は有効です。

既にオフィスビルやホテル、企業のコンピューターセンターで崩落防止を目的としてご採用いただいています。

コンクリートブロック壁には、高弾性補強材と接着剤で崩落危険部位を一体化して、周囲に定着することで崩落を防止する補強を行っております。

緊急の安全確保、機能維持等が必要な時に「耐震補強」ー 応急対策補強

耐震補強設計を行う余裕の無い場合でも、SRF工法による補強を行った方が良いことがあります。実際に地震に被災し、損傷した構造物に対して緊急に安全確保、機能維持等が必要な場合は、設計を行う時間的な余裕が無く、通常の診断や設計技術を用いることが困難になることもあると思われます。

これ以外にも、数年後の建替えまでの間、建物に不安を抱えたまま何もしないで使い続けるわけにはいきません。また、耐震診断を行った結果、正式の補強は不可能であると判断されたが、事情により退去できない場合には、直ちに対策を行う必要を生じます。

SRF工法は、応急対策に向く特徴を数多く備えています。SRF補強する部位、範囲、量を任意に選択することができ、SRF補強材を貼り付ける工事は、ガス、電気、動力等を必要とせず、手作業で、施工が可能です。