SRF工法とは?
SRF工法はしなやかな高弾性材料を貼り付け、巻き付ける補強工法です。
SRF工法は、しなやかで強靭なポリエステル繊維製のベルトやシートをウレタン系の一液無溶剤接着剤で、構造物の柱、壁、梁、接合部、仕上げ設備等の取り付け等に貼り付け、巻き付けることで補強するシンプルで効果的な工法です。図のように、RC系、木造系の構造物の色々な部材や接合部に使われています。SRF工法の補強材と接着剤は大きく変形させても元に戻る高弾性材料です。コンクリートや木材の表面を覆うことにより、ひびや亀裂が広がるのを抑え、崩落を防止し、大きく変形しても復元する収震性の高い部材や接合部を作ることができます。柱を巻き立てることで、内部が破壊しても、建物を支え続けるフェイルセーフ機能も持っています。経年劣化を防ぐ効果も期待できます。
SRF工法は、木材やコンクリートに穴をあけません
鉄骨ブレース、壁、金物などを取り付ける耐震補強は、地震力に抵抗しようとする補強です。ブレースなどを固定する必要がありますので、木材やコンクリートに穴を空け、アンカーボルトなどを突っ込みます。地震で大きく揺れると、この孔が弱点になり、硬いアンカーボルトや鉄骨が、木材やコンクリートを破壊する危険性が生じます。
高弾性材料補強は、コンクリートや木材の表面に、高弾性補強材を貼り付けたり巻き付けたりする工法ですので、木材やコンクリートに穴を空けないことを基本にしています。手で曲げられるくらいしなやかな材料ですので、木材やコンクリートを傷つけません。
雑壁、CB壁、天井、設備などの崩落防止、落下防止にも使われています
柱、壁等の構造材、雑壁、CB壁等の非構造材は耐震設計ではひびが入り、損傷しても仕方ないとされています。しかし、使用性を大きく損ないます。天井、設備などが落下すれば人命に危害が及ぶ危険性があります。SRF工法はこの対策・補強にも使われています。しなやかな高弾性材料は、ひび割れ、亀裂を復元し、一体性を保持して崩落を防止します。既存の留め具等が外れた場合にも、落下を防止するフェイルセーフ機構を作ることもできます。
SRF工法の高弾性材料は21世紀に生まれた補強材料です
耐震構造、耐震補強に使われている鉄筋、鉄骨、鉄板、炭素繊維、アラミド繊維などは前世紀に登場しました。これらは、 補強するコンクリート、木材に比べて弾性係数が大きい、高弾性率材料、硬い材料ですが、僅かなひずみで塑性化するか、破断します。元に戻る性質である弾性は低い、低弾性材料です。一方、SRF工法のポリエステル製のベルト・シートは、弾性係数は小さいが、大きなひずみまで破断せずに、元に戻る材料、弾性の高い材料、高弾性材料です。柔らかいので、コンクリートや木材を損傷しません。21世紀に登場した新しい補強材料です。柔らかい材料でも、十分補強になるというのが、SRFの基本特許です。

左のグラフは、補強に使われる材料の応力とひずみを描いたものです。ひずみは、材料に力を加えて伸ばしたときの伸びを元の長さで割った伸び率、応力はこのときの力を断面積で割ったものです。このグラフの傾きが弾性率で、炭素繊維、鉄筋等はコンクリートや木材よりも傾きが急な高弾性率材料です。ポリエステル製のベルト・シートは、補強するコンクリート等よりも傾きが緩い材料ですが、大きなひずみまで復元する高弾性材料です。
右のグラフは、左のグラフに各補強材の代表的な厚さを掛けたもので、単位幅当たりの復元力を示しています。柱や壁の表面付近に設置した補強材の補強効果はこのグラフで表されます。左のグラフの傾き、弾性率は製造工程で決まる材料固有の値ですが、右のグラフの傾きは厚さに比例しますので、設計で決めることができます。高弾性材料で補強することで、はじめて、設計ひずみでは、鉄筋等と同等の効果を発揮し、これを大きく超えるひずみでもこれに応じた復元力を発揮する新しい補強が実現しました。実証試験・実験等に関して、詳しくはこちらをご覧ください。
高弾性材料で補強した柱にはRCのような「終局状態」⇒「崩壊」はありません
左の写真は、大型震動台実験でとらえたRC柱の崩壊過程、右の写真は、高弾性材料で補強した柱に繰り返し変形を加えた模型実験です。鉄筋で補強したコンクリート柱(RC柱)は、左の写真のように、変形に耐えきれず、びびが入り、いわゆる「終局状態」となり、さらに変形すると、鉄筋の回りのコンクリート(かぶり)がとれて崩壊してしまいます。一方、高弾性材料で補強した柱(SRF補強柱)は、RC柱が崩壊するような大きな変形を繰り返しうけても損傷が小さく、右の写真のようにしなやかに変形して元の形に戻ります。SRF補強柱にはRC柱のような「終局状態」⇒「崩壊」はありません。高弾性材料を用いた補強の効果です。
大型震動台実験の詳しい説明は、こちらを、柱模型の実証実験については、こちらをご覧ください。

SRF補強した建物にも「終局状態」がなくなり、揺れが収まります
鉄筋などで補強した柱、壁が終局状態になると建物としても終局状態になります。地震が、さらに、大きな変形を強制すれば崩壊してしまいます。現行の耐震基準は、これを避ける為に、コンクリートを大量の鉄筋や鉄骨で補強することを求めており、改訂の度に鉄筋等の量が増えています。耐震補強もこの為に行われています。右の写真は、新耐震の建物の内部です。熊本地震で、大きな加速度を受けて内部が破壊し、貴重な機材や研究試料が失われ、長期に渡り使用中止を余儀なくされた事例です。柱・壁の崩壊を免れようとして、内部が崩壊してしまっています。
高弾性材料でSRF補強した柱には、終局と崩壊が無いので、これで構成された構造物にも、終局と崩壊を無くすることが可能です。従って、鉄筋等の量を削減できるので、内部の震動も小さく収まります。左の建物は主要な柱をSRF工法で補強した結果、東日本大震災の大きく長い揺れを受けても建物だけでなく、内部の仕上げや什器にも被害がなかった仙台駅近くのビルの事例です。この他にも、周囲の建物が倒壊したり、使用停止になる中、SRF補強した建物は、揺れも小さく、被害もなくて良かったという反響を多数いただいております。これは収震効果と呼ばれています。詳しくは、こちらの資料をご覧ください。

高弾性材料による収震効果は木造事務所でも確認されています
下の写真は、都内の木造地上2階の1968年竣工の事務所です。高弾性材料で接合部と釘打ち部を補強しました。4隅の柱には、大きな変形を受けても一体性を確保すべく、軒桁から柱をに沿って土台までベルトを貼り付ける「軒桁柱土台流し貼り止め巻き工法」を実施しています。工事は、2010年8月から10月に実施。2011年東日本大震災で震度5強の揺れを受けましたが、周囲の木造には仕上げ等に被害を生じたものが多かった中、揺れが少なく被害がなかった事例です。木造でも、収震効果が確認された事例です。
木造SRF補強の詳しい説明はこちらをご覧ください。

SRF工法の収震効果は、東日本大震災、熊本地震で実証されました

高弾性材料補強は、SRF工法と呼ばれており、北は、北海道の名寄市から、南は沖縄県八重山郡竹富町まで、全国各地の事務所、マンション、学校など4,000件以上の補強工事に使われています。東日本大震災とその後の地震で震度5以上の揺れを受けた地域には461件の実績がありました。FAX、電話、訪問等で調査したところ、「以前の地震より、揺れが少なかった。」「付近の学校が被災する中、最小被害で授業継続できてよかった」等の反響を多数いただいております。しなやかな高弾性材料で補強することで、揺れが収まり、被害が抑えられることが実験でも実証されています。 詳しくは、こちらのパンフレット、あるいは、収震をご覧ください。
高弾性材料補強で収震性を高める
揺れが収まり被害が最小化できる
SRF工法による収震効果は大型震動台実験でも確認されています
2001年11月に、東京大学地震研究所 壁谷澤寿海教授の指導の下、科学技術庁防災科学技術研究所の大型震動台にて同研究所、東京大学及び構造品質保証研究所(当社)の3者共同研究で実施された1階に耐震壁が偏在して配置される偏心ピロティ構造物を想定した震動実験で、1978年宮城県沖地震等の大地震の地震波を次々にかける実験で、SRF工法で補強した建物模型は、5波目の1995年阪神淡路大震災の神戸海洋気象台の地震動と6波目の鷹取の地震動を載荷した段階でも、損傷と残留変形がほとんどなく使用継続できることが確認されました。震動台実験に関する詳しい説明は、こちらを、震動台実験結果の詳しい分析から、SRF補強により、無補強に比べて収震性が大幅に向上したことの確認結果は、収震をご覧ください。

鷹取地震波までの6波を載荷したときの変形と復元力のグラフ
高弾性材料を使った補強工事は人と建物に優しい

高弾性材料を使った「SRF工法」は、写真の材料と工具で補強する工事です。ポリエステル繊維製のベルトやシート(高弾性補強材)をウレタン系一液無溶剤(高弾性接着剤)で、貼り付け、巻き付けるので、粉塵、振動、臭気、騒音はほとんど発生することはありません。また、接着剤には刺激臭がなく、シックハウス症候群の原因物質の一つであるホルムアルデヒドを含みません(F☆☆☆☆)。しなやかな高弾性補強材は、柱・梁等が地震で繰り返し変形しても、鉄のように、コンクリートや木材を傷つけません。人と建物に優しい補強工法です。高弾性補強材・高弾性接着剤について詳しくはこちらをご覧ください。
居ながら補強工事が可能、障害物があっても狭いところでも大丈夫です
高弾性補強材料は、軽量でしなやかです。高弾性接着剤は一液無溶剤ですので、刺激臭はなく、徐々に硬化するので、作業は余裕をもってできます。工事は2~3人の人力で包帯を巻きつけていく手作業で、大きな機材や特殊な工具を必要としないため、従来工法と比較して工事費が安価な上に、施工期間も短く済みます。「仕事をしながら」はもちろん、百科店の食品売り場で、「天ぷらを売りながら」シート一枚隔てたところで補強工事をしたケースもあります。
SRF補強材は、せん断変形、曲げ変形には追随し、人の手や、手で持った道具が入るスペースがあれば施工できますので、パイプやアンカーなどの障害物がある柱をそのまま補強できます。左は新幹線高架橋脚下のパイプ等をかわしての工事、右は事務所での居ながら補強工事の模様です。
工事費に関してはこちらをご覧ください。
SRF工法は、ほとんどの仕上げの下地になります
高弾性補強材は、ポリエステル繊維ですので、ボード仕上げ、モルタル仕上げ、塗装など通常の仕上げを行なうことが可能です。さらに、漆塗りや、石張り仕上げを行なった例もあります。従来の耐震補強工事とは違って、コンクリートや鉄筋などの構造材料は使わず、柱などの躯体と仕上げの間に接着剤と補強材が挟まる形ですので、仕上げ表で表記できる工事になります。2段目の写真は、東本願寺大虹梁のSRF補強と漆仕上げです。木目を描いて、補強前の姿を復元しています。
ボード仕上げ
モルタル仕上げ
石張り仕上げ
東本願寺大虹梁SRF補強
東本願寺大虹梁漆仕上げ
SRF工法で、公的基準をクリアする耐震補強ができます
SRF工法は、耐震補強工法の一つとして、RC系建築物の柱、壁の補強、及び木造の基礎、接合部、壁について、日本建築防災協会等の技術評価を取得しています。また、コンクリート系の土木構造物には、建設技術審査証明を取得しています。SRFを用いた耐震改修計画に関して、第三者機関による評定を受けた実績も多数ありますので、公的基準値をクリアする耐震補強にもお使いいただけます。これに、倒壊防止、使用継続性向上などの目的を加える補強、あるいは、公的基準にこだわらず、倒壊防止目的に絞った補強を安価で迅速に行うことなどもできます。
補強の種類と特徴については、こちらをご覧ください。

高弾性材料でマンションのピロティ柱を補強すると震動形状が整えられることが実測されました
1994年竣工の地上11階建、SRC造、一階部分が駐車場のピロティ集合住宅建物の一階部分の柱6本の内、壁のついていない独立柱2本をSRF工法で補強する前と後で、振動計を屋上と一階において振動を計測したところ、補強前は、屋上面が、上下左右に大きく揺れていたが、補強後は、水平面内で円を描くような揺れに変わったことが実測されました。左の動画は、補強前後の振動計測結果をアニメーションで示したものです。他の建物計測でも、同様の効果が確認されています。大地震では、この震動形状が増幅されると考えられるので、高弾性材料で補強した建物の方が揺れが少なく、被害も少ないことが頷ける結果です。
補強前

補強後


※変位を10万倍に拡大 数ミクロン→数センチ
SRF 工法についてさらに詳しく
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施工方法
鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄筋コンクリート造の柱へのSRF工法による施工手順、木造の基礎、壁、接合部へのSRF工法による施工手順をご紹介しています。
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補強の種類
命の安全を優先する補強、大地震でも建物の倒壊を防ぐ耐震補強、基準値をクリアする補強、コンクリートブロック壁・天井の崩落防止補強、緊急の安全確保・機能維持等のための補強についてご紹介しています。
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効果(実証実験)
東京大学、横浜国立大学、科学技術庁防災科学研究所、東海旅客鉄道、東北大学、京都大学、職業能力開発総合大学校で、多数実施してきたSRF工法による収震補強の実験動画や実験結果がご覧いただけます。
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改修事例・施工実績
SRFの施工実績は2700件を超えており、SRFの優れた軸支持能力を生かした倒壊防止を目的とする「軸耐力」の実績はその3割を超えています。SRF工法による耐震改修事例について写真付きで紹介しています。