2025年1月
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会員の皆様
2月、3月、4月に2025年SRF研修会と懇親会を開催します。 -
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高弾性材料補強(SRF工法)ページの内容を更新しました。 -
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収震の説明の表題を収震設計として、内容を更新しました。 -
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微動診断関連特許「特許第7609946号」が登録されました。 -
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2025年の年頭所感を公開しました。
2024年11月
2024年10月
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2024年5月
2024年1月
2025年 年頭所感
新しい年を迎えられたことにお慶びを申し上げます。今年は乙巳の年です。「乙(イツ)」は十干の2番目であり、誕生間がなく、かがまっている状態を表し、「巳(シ)」は、十二支の6番目で、草木の成長が極限に達した状態を表すそうです。陰陽五行思想では、「乙(きのと)」と「巳(み)」は、「木生火(もくしょうか)」という組み合わせで、木は燃えて火を生むという関係性である。すなわち成長が極限に達し、内包するエネルギーの行き先が閉ざされたことにより、爆発するような大きな変化を引き起こす状態を表わすそうです。今年は、何か、大きな変化、変革が起こる年であると解釈できます。
既に、我が国の自動車産業は100年に1度の変革期にあると言われています。これは、脱皮のような自己変革ではなく、世界規模の大きなうねりに、日本の自動車業界、そして、日本全体が、飲み込まれつつあることの現れではないでしょうか。この波は、18世紀後半から始まった産業革命に匹敵する、あるいは、これ以上のものであると感じています。産業革命は、燃焼を制御し、エネルギーを得る発明を契機としていましたが、今度の革命は電磁波を制御し、エネルギーを得るだけでなく、情報を伝達し蓄積、加工することに関する発明が原動力になっています。この革命は、私たちの生活に必要なものを、劇的に小型に、軽量で、早く、単純に、局所的に提供する技術を数多く生み出しました。最近まで大段取りで行っていたことを、あるいは、できなかったことを、身近な、手に持てるものにより、さっと、実現する技術です。いわば、技術の進化型です。使う側から見れば誠に単純ですが、人類が積み重ねた自然法則に関する深い知識と、多くの発見と、様々な経験の蓄積に裏打ちされています。
高弾性材料補強(SRF)と微動診断(MTD)は、前世紀末に登場し、四半世紀に渡る実証を経ています。これらを活かす統合防災技術として、昨年、収震設計(SRD)が登場しました。これは、重油を燃焼させて動力を得る大型機械を使い、鉄やコンクリートを大量に投入したり、工場で製造された高価な機械を据え付けたりする技術ではなく、手に持てる材料と計測器で、その場で、構造物の地震に対する安全性を、物の基本的な性質である弾性と慣性を利用して、評価し向上させる技術です。小型、軽量、単純、高速、局所性など、進化型技術の特徴を持っています。
地震に対して安全であるということは、簡単ではありません。日本のどこかに、近い内に、大地震が起こることは、経験的に分かります。しかし、いつ、どこで、どのような地震が発生するかを、これに基づいて避難などの判断基準とできるような高い精度で予測することは、現時点では不可能です。地震は、遥か過去から遠い将来に渡る巨大な時空間的なスケールの中で生ずる巨大なエネルギーを放出する破壊現象という人間の計測・解析能力を超えた事象です。計測や計算に基づいて、その発生を高い精度で予測することは、地震の発生を制御することと同様に、人間が造る科学技術の限界を超える種類の問題であり、今後も不可能であると考えています。地震の発生と様相が極めて不確定ですので、地震が、引き起こす地震動、そして、これが引き起こす個々の構造物の揺れも、正確な予測や制御が困難な対象になります。
今から、丁度、30年前の1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災までは、日本の耐震工学は地震を克服した、大地震の予測も、建物やインフラ施設という構造物の揺れの制御も正確に行うことができると信じられていましたが、新幹線やビルが倒壊した映像が大きく報じられ、この神話は打ち砕かれました。それから、30年の年月を経て、また、新耐震基準を守っていれば、安全である、震度7の大地震でも、避難する必要はなく、マンションやビルに留まっていられる、被害を生ずるのは旧基準の建物であると信じられるようになっています。東日本大震災、熊本地震、能登半島地震などで、新耐震や耐震補強済みの構造物が、使えなくなって取り壊されたこと、生活や仕事の場を取り戻すまでに長期間と多大な労苦を要したことは、大きくは報じられなくなっています。
洪水や津波と同様に、いや、地震に対してこそ、被害を最小限に留める対策を事前に行い、被災後の復旧体制を整えておくことが必要です。この為には、インフラ施設や建築物などの構造物に関わる多くの人々が、建設前の計画から、設計・施工、維持管理、被災後の復旧、取り壊し建て替えまで、共通の理念と一貫した方針に基づいて協力して対処することが不可欠です。これを実現する手段と場を提供する技術が収震設計です。地震の不確定性を認識し、構造物の機能維持能力と危険性を、自然法則に即して評価することが基本です。
産業革命前夜の18世紀の地球でも、現在のように、地震、津波、異常気象が猛威を振るっていました。1755年11月1日のリスボン大震災は、地震と津波で、リスボンを壊滅させました。ミサが行われていた教会が倒壊し、多数の信者が死傷しました。国王は、恐怖から、死ぬまで閉所恐怖症に苛まれ、木造幕舎住まいを続けたとのことです。この震災を契機に、カトリックと王政の絶対権威が失墜し、科学技術が開花し、自然法則が明らかにされ、多くの発明、発見が生まれ、市民革命の扉が拓かれています。後に、対象が認識を形成するのではなく、認識構造が対象を規定するという認識論におけるコペルニクス的転回を行ったカントは、地震前後、ヨーロッパ全域に渡り、異常気象(暖冬)が発生していて、これが、余りに並はずれなので、その為にあのような大地震が起こったといっても許されるだろうと、震災の翌年に発表した地震論の中で述べています。
今世紀の地震動は前世紀に作られた新耐震の想定を大幅に上回る強さです。大都市を襲えば、リスボン大震災のように、即座に現在の社会基盤を破壊し、社会を根底から覆す大きな力をもっています。収震設計は、このような地球環境において、日本の、そして世界の、都市と国民を守る為に生まれたものであると感じています。皆様に収震設計を理解していただき、次の震災を待たずに、都市と国の姿を、将来の厳しさを増す地球環境に即した、新しい形に自己変革すること、進化させることに向けて、協力していただけるよう努力します。
本年も、宜しくお願いします。
